【衝撃】ロシア・ウクライナ停戦で平和は来ない?【台湾有事/世界情勢】

社会

世界を震撼させたロシアによるウクライナ侵攻に、停戦の兆しが見えてきました

実際に停戦するかは不明ですが、そうなる可能性はあります

しかし、これからの説明を聞いても、本当に停戦を手放しで喜べるでしょうか?

※こちらは、YouTube動画としても公開しています!⇩


停戦の兆し:なぜ安易に喜べないのか?

ウクライナの戦争による被害は甚大です

何万、何十万人もの人々が殺され、拷問も、民間人の虐殺も起こっています

現在のウクライナは、南東部の大部分を占領されており、また、国民や家族を大勢殺されたからこそ、ウクライナ国民の停戦への心境は極めて複雑でしょう

そして、ロシアという国家は加害者でありながら、不本意に戦争へ駆り出されたロシア国民は被害者でもあると言えます

大きな問題は、たとえ停戦が実現しても、平和が保証されないことです

それは、決して、ロシアとウクライナの2か国だけの問題に留まりません

もしかすると、今の私たちは、世界大戦後、あるいは、キューバ危機以降の大きな危機に差し掛かっているのかもしれません


ロシアが破った21世紀のタブー

日本人にとっては「戦後」である第二次世界大戦後も、数多くの戦争が起きましたが、それでも、ここ数十年は、文明の歴史では最も平和な時代ではあったようです(注[1]

2つの世界大戦が起こった20世紀ですら、戦争による死亡率は3%ほど、そして、21世紀初頭では、1%以下でした(注[2]

その間も、他国への侵攻はあったものの、それはタブーであると考えられるようになっていました

しかし、ロシアのウクライナ侵攻はこのタブーを大々的に破りました

この行為は、そのものが卑劣であるだけでなく、さらに別の問題を生みます

実は、仮に「停戦」という形であれ、ロシアが領土の一部を奪うことに成功してしまえば、他の国への後押しになりかねないのです

特に懸念されるのは中国です

貧しかった数十年前とは違い、今の中国の経済的、技術的、そして軍事的発展はすさまじく、中国の軍事費は、特に2010年あたりから激増しています

そんな中、中国は、必要であれば武力も行使して台湾を占領することを示唆しています(注[3]

それが実際に起こるかは誰にも分かりませんが、このいわゆる「台湾有事」で人々に大きな被害が出ることは、台湾の人々や日本を含む周辺国の人々だけでなく、多くの中国の国民も望んではいないのではないでしょうか?

これ以上、ウクライナでの被害者が増えないことは当然望むべきものの、このままロシアに領土を与えて停戦することは、侵略を部分的に成功させたことになるのです

特に、長期的、世界的な視野では、ここに大きなジレンマがあるのです


戦争をすべきでない理由

1. 経済的損失

戦争は、大きなデメリットを伴います。歴史を振り返ると、国や帝国の戦争への出費はたいてい厖大でした

ローマ帝国、オスマン帝国、18世紀ごろのイギリスでは、いずれも軍事費は60%や70%にも上りました(注[4]

ところが、21世紀初頭の軍事費の世界平均は、7%程度に下がったのです(注[5]

しかし、近年では世界中の国々で軍事費が増えています

2020年から2023年の軍事費の増加率は、ロシアで77%、ウクライナで846%、ドイツで25%です(注[6]

日本も、経済的には困窮しつつも、軍事費の比率は増えています(GDP比で2.33%増)

本来なら、こうした何百億ドルもの資金は、国民の福祉や教育に使えたはずであり、それらが人を殺害するためのミサイルや戦車に浪費されているのが現状なのです


2. 軍事費で解決できる世界の問題

2023年での世界の軍事費は、2兆4000億ドルを超えます

例えてみると、この費用だけで、気候変動を解決するための費用の半分はまかなえるし(注[7])、食糧支援で不足する額の165年分に相当します(注[8]

3.人命

そして、当然、なにより、戦争をすべきでない理由は人の命を奪うためです

戦争では、数多くの虐殺や拷問が起きます。軍事費増加による経済的損失自体は後で取り戻せます

それに、貨幣というのは単なる概念でしかありません

しかし、実在する人間は苦しむし、失った命や人生は、何億や何兆と費やしても二度と取り戻せないのです

世界は協力するしかない

では、戦争をなくすにはどうすればいいのか? 

それは、各国が相互に信頼し、協力することが不可欠です

これはあまりにも月並みですが、それでも戦争や国の動きは人間の思想によるため、どうしても、信頼や協力が欠かせないのです

ところが、近年、影響力の大きな国々であるロシア、中国、アメリカなどが、敵対や分断を露骨に示す傾向が見られます

例えば、「アメリカ・ファースト」の方針は、「自国民を大切にする」という善良な意図というよりは、「他国との分断」を意味しています

戦争からパンデミックまで、世界の大きな課題を解決するには、世界中の国が協力する必要がある中、アメリカは、パリ協定から再び離脱し、WHOからも脱退するなど、国際的な組織から距離を置いています

このような「自国ファースト」の動きは、ヨーロッパから中南米まで、世界各地で見受けられます

その思想は、国際的な協力体制を弱体化させ、他国との危険な状況や、世界規模の課題の悪化を生み出します

それでも、最後に強調すべきこととしては、たしかに、世界から戦争がなくなる様子はありませんが、それは、今後も同じであることを決定づけるものではないし、何より、戦争はなくならずとも、実際に減少はしたのです

歴史を経て、21世紀初頭では、軍事費がかつての70%から7%に減り、戦争・暴力での死者は、かつての15%ほどから1%以下に減ったのです

現代では、他にも多くの進歩がありました

過去200年ほどで、世界の極貧層は75%から10%に減り(注[9])、平均寿命は29歳から70歳を超え(注[10])、識字率は12%から87%に増加しました(注[11]

今後の世界がどうなるかは分からないし、世界から問題がなくなることはないでしょう

しかし、世界がより良くなることなら可能であるし、それに人類は成功してきたはずです

それなら、今後の歴史において、さらに平和な世界を作ることも可能であるし、実際に、より賢い選択肢を選んでいかなければなりません

【本の紹介】

【自己紹介等】


[1] スティーブン・ピンカー『暴力の人類史』(青土社2015)

[2] Causes of Death – Our World in Data: https://ourworldindata.org/causes-of-death

[3] https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic017.html

[4] Emma Dench, Empire and Political Cultures in the Roman World (Cambridge, U.K.: Cambridge University Press, 2018), 79-80; Keith Hopkins, “The Political Economy of the Roman Empire,” in The Dynamics of Ancient Empires: State Power from Assyria to Byzantium, ed. lan Morris and Walter Scheidel (New York: Oxford University Press, 2009), 194; Walter Scheidel, “State Revenue and Expenditure in the Han and Roman Empires,” in State

Power in Ancient China and Rome, ed. Walter Scheidel (New York: Oxford University Press, 2015), 159; Paul Erdkamp, introduction to A Companion to the Roman Army, ed. Paul Erdkamp (Hoboken, N.J.: Blackwell, 2007), 2.

Suraiya Faroghi, “Part II: Crisis and Change, 1590-1699,” in An Economic and Social History of the Ottoman Empire, vol. 2, 1600-1914, ed. Halil Inalcik and Donald Quataert (Cambridge, U.K.: Cambridge University Press, 1994), 542.

Jari Eloranta, “National Defense,” in The Oxford Encyclopedia of Economic History, ed. Joel Mokyr (Oxford: Oxford University Press, 2003), 30-31.

[5] SIPRI Military Expenditure Database | SIPRI https://www.sipri.org/databases/milex

[6] 2023年軍事費ランキング、脅威への備えが顕著に ~SIPRI軍事費データ2024年4月版公表、リアリズムと純金茶碗~ | 石附 賢実 | 第一生命経済研究所 https://www.dlri.co.jp/report/ld/333796.html

[7] 気候目標を達成するために、世界はさらなる政策的野心、 民間資金、革新を必要としている https://www.imf.org/ja/Blogs/Articles/2023/11/27/world-needs-more-policy-ambition-private-funds-and-innovation-to-meet-climate-goals?utm_source=chatgpt.com

[8] jawfp_annual_report_2023.pdf https://jawfp2.org/annual/2023/assets/pdf/jawfp_annual_report_2023.pdf?utm_source=chatgpt.com

[9] Share of population living in extreme poverty, World https://ourworldindata.org/grapher/share-of-population-living-in-extreme-poverty-cost-of-basic-needs

[10] Life expectancy https://ourworldindata.org/grapher/life-expectancy?time=1820..latest&country=~OWID_WRL

[11] Literate and illiterate world population https://ourworldindata.org/grapher/literate-and-illiterate-world-population


加藤将馬

【経歴】中途半端な高校から、猛勉強して英語を話せるようになり、大阪大学に入学
【卒業後】ある会社の上司が原因で深刻なうつ病を患う
※YouTube自己紹介動画: https://x.gd/DD6HJ
【現在】
①「一度きりの人生を誰もが幸せに生きられる社会を目指す」を信念に発信中:書籍『自殺大国ニッポン』https://amzn.asia/d/0Hv0AuY
②「世界と人間社会についての学識」をテーマに発信中:『宇宙と人類、138億年ものがたり』https://amzn.asia/d/beq5X9W

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