この地球において、私たち人間の発展はすさまじい勢いです
かつて人間はずっと狩りをして暮らしていたのに、今では、宇宙探査機を火星に飛ばし
スマートフォンを使って世界中の人々を一瞬でつなげています
また、人口は過去200年で2億人から80億人まで激増した結果(注[1])

今では、世界の大型動物の30%弱は人間、そして、70%弱は人間が食べるために飼っている家畜であり
野生の大型動物は9%程度しかいなくなってしまったのです(注[2])

30万年前にアフリカ大陸にて誕生したとされる人間(ホモ・サピエンス)は
6万~7万年前から本格的に中東やヨーロッパなどへ進出していき、世界中に広がりました
では、なぜ、地球の覇者になり宇宙進出を進めているのは、バナナやクジラではなく、ホモ・サピエンスだったのでしょうか?
そして、なぜ7万年前になってようやく世界へ進出できたのでしょうか?
※こちらは、YouTube動画としても公開しています!⇩
①人間一人ひとりはすごくない?
力の強さ
まず、「人間は最強」と言われますが、それには語弊があります。
よく考えると、私たち人間は、あまり力が強くはありません
ライオンやワニやクマにはまったくかなわないし、細菌やウイルスにも負けてしまいます
発達した電子機器を持つ現代人でさえ、家にクマが襲ってきたらひとたまりもありません
つまり、人間は“個体の”力の強さで成り上がったのではないのです
能力の高さ
そして、残念なことに、実は”個体の”能力もあまり高くはありません
人間が地球で最も優れた能力を持つ動物だと誤解する人は少なくありませんが
人間にはできなくて他の動物にはできることはいろいろとあります
チーターのように高速で走ったり、鳥類のように飛んだりすることだけでなく、人間にはイルカの超音波を聞き取れないし、ハチやチョウが見える紫外線も見えません
また、教育を何年も受けないと、算数の簡単な計算すらできません
どれほどの才能があっても、例えば、アインシュタインでも、学習ができなければ、相対性理論どころか、いや、微積分どころか、掛け算や割り算もできないのです
さらには何年も教育を受けたとしても、ほとんどの人はせいぜい2桁や3桁の四則計算が限界で、例えば、6,593,715×5,864を暗算で答えられるような脳を持っていないのです
しかも極めつけは、ほとんどの現代人でさえ、スマートフォンの仕組みどころか、トイレやチャックの仕組みすら説明できないのです(注[3])
このことは、実際に、白紙の紙に手書きで構造の説明を書こうとすればわかります
トイレ1つを知るには、水や空気の動きを利用するサイホン効果などを知る必要があります
すると、なおさら人間が特別な理由が気になります
もし、力が強くはなく、能力も思ったよりも高くないのだとしたら、人間の何が特別だったのでしょうか?
それは3つあります
②1つ目の理由:知能
1つ目は、ある程度の知能です
確かに、さきほども言った通り、知能を含む人間の能力は思ったよりは高くはないのですが
それでも一定以上の知能を持っていることは事実であり、それは文明に必須です
ある程度の記憶力、大まかな因果関係の理解、抽象的な思考がなければ、お金や資本主義が生み出せませんし、それでは科学や産業革命は誕生しないのです
また、道具を組み立てるための知能もなければ、やりや服はもちろん、紙や火薬も作れません
そして、言語も極めて重要です
人間以外の動物も様々な言語を持ちますが、人間の言語は語彙が多く、複雑な文法構造があって、過去や未来、因果関係、そして抽象的な概念も表現できるのです
チンパンジーの言葉には「ライオンだ」「逃げろ」という単語はあっても、「国家」や「重力」といった単語はありませんし、「昨日、友人が川で遊んでいたことを今思い出した」といった名詞節や時制などの文法も使えません
ただし、やはり一人ひとりがあまり賢くないことは変わりません
すると、人間の強みは、さらに2つの理由で、“集団”にて発揮されるのです
その2つについては、次回説明します
[1] HYDE (2023); Gapminder (2022); UN WPP (2024) – with major processing by Our World in Data: https://ourworldindata.org/grapher/population?country=~OWID_WRL
[2] ユヴァル・ノア・ハラリ(2018)『ホモ・デウス』河出書房新社p94
[3] スティーブン・スローマン、フィリップ・ファーンバック(2021)『知ってるつもり: 無知の科学』早川書房
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