みなさん、こんにちは!カトウです。
みなさんは、近年、「幸せ」を科学的に研究する動きが進んでいることをご存知でしょうか?
今回は、「科学で分かる幸せ」をテーマに解説していきます。
※こちらは、YouTube動画としても公開しています!⇩
①「生物学で分かる“幸せ”」
「幸せ」について考えてみると1つの大きな疑問が浮かびます
「なぜ、文明が発達して、いつしか石器がスマートフォンに発展しても
目に見えて皆が幸せになっていないのでしょうか?」
よく考えると、これはとても不思議です
しかし、生物学で考えると答えは分かります
簡単に言えば「幸福というのは、自然界でうまく生きられるように動物を動かすためのもの」だからです
例えば、人間などの多くの哺乳類は、仲間とつながることで大きな幸せを感じます
なぜなら、仲間と協力する方が生き残りやすいからです
実際、幸福な人に共通するものを調べた研究では、軒並み「良好な人間関係」が挙げられているのです(注[1])
その一方で、物欲が満たされても、あまり幸せは感じにくいどころか
その喜びはすぐに消えやすいため、次々と物を求めては満たされなくなるという循環になりやすいのです(注[2])
基本的には、物に対する満足感は急速に薄れやすい一方で
人には関心を向け続けられるし、時間をかけてこそ仲も深まりやすくいつまでも満足できるのです(注[3])
現代社会に生きてもなお、結局のところ、私たちは数十万年前の狩猟採集民の祖先と同じ脳を持っており、同じ欲求を持っているわけです
よく考えると、すぐに慣れることは分かっていながらも高価なタイプの最新のスマートフォンを購入したり
高い収入や地位があるというだけで優れていて幸せだと錯覚したりすることはよくあると思います
しかし、今持っているものを大切に使い続けて、代わりに余ったお金を体験や人間関係に使った方が幸福度は高く
収入や地位が非常に高い人でも、意外と一般的な人と同じようなことで苛立ったり楽しんだりしているかもしれません
②「化学で分かる幸せ」
幸せが“化学的現象である”という点も、とても重要です
というのも、幸福というのは、セロトニン(リラックスした気分を与える)からドーパミン(報酬や快楽といった気分を与える)までの神経伝達物質の働きなどで生まれることが現代科学では分かっているからです
そして、そうした神経伝達物質の伝達に異変が起こると、精神疾患になってしまうことがあります
抗うつ薬はセロトニン分泌などに影響を与え、精神疾患を改善しますが
これは、幸福が神秘的な体験ではなく、具体的な化学的プロセスに基づいていることを示しているのです
また、化学的には、幸せに影響を与える、より直接的な方法もあります
要するに、私たちの感覚は、すべて脳内の電気刺激でできているのだから、脳に適切な電気刺激を与えることで私たちは幸福を感じることができるというわけです。
驚くことに、すでにそうした技術は使われており、脳に電気刺激を与える多くの研究が成功しています(注[4])
※こちらについて詳しくは下の動画をご覧ください!
まとめ
つまり、私たち人間は、何百万年もの進化を経て、幸せという感情を身に着けており
私たちの脳も体も、いまだに狩りをしていた時の自然界に合ったつくりをしています
現代人は、孤独や運動不足、そして過食により不幸や不健康になりますが、それにはこうした原因があったのです
かつては、仲間とつながらないと生きていけなかったし、運動も生存にとても重要でした
また、食べ物も限られていたので、できるだけたくさん食べる本能がありますが、現代ではむしろそれが不健康につながってしまうというわけですね
一方で、化学的な観点からの薬や電気刺激による介入には賛否がありそうです
とはいえ、少なくとも生物学の観点を知れば
幸福度を上げるには、現代社会で足りなさそうな部分を補うことが大切だと気づかされるのです
[1] ロバート・ウォールディンガー、マーク・シュルツ著、児島修訳(2023)『グッド・ライフ』辰巳出版; Diener, E. et al. (2018) Happiest People Revisited. Perspectives on Psychological Science.
[2] Roberts, J., & Clement, A. (2007) Materialism and Satisfaction with Over-All Quality of Life and Eight Life Domains. Social Indicators Research. また、精神的に満たされないことで物欲に走るという因果関係もありそうです。Mario Pandelaere (2016) Materialism and well-being: the role of consumption, Current Opinion in Psychology.
[3] Kahneman, D. (2009) The most important living psychologist? The Psychologist.
[4] 紺野大地、池谷裕二著(2021)『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』講談社
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