【なぜ陰謀論に騙される?】魅力と危険性について解説!

社会

多くの人をひきつけ、恐怖を与える陰謀論

たしかに、「実は〇〇が危ない」と聞いたり、「政府は国民から〇〇を隠している」というSNSの投稿を見かけたりしたら怖いと思うのも分かります

今回の動画では、陰謀論の危険性や、そもそもなぜ陰謀論が誤っていると言えるのかを、3つの観点から説明します

※こちらは、YouTube動画としても公開しています!⇩

①専門家は邪悪で信用してはいけないという考え

まず、何事も、意見が分かれる際には、誰を信用すべきかという問題があります

答えが分からないときは、いったい、私たちは誰に頼るべきでしょうか? 

数学を教わるなら

数学の勉強に例えてみましょう

もしも数学を教えてもらうとしたら、誰に教わりたいでしょうか?

そして、同じ内容について違う説明がされたら、誰を信じるべきでしょうか?

次の3人ならどうでしょう?

「仲が良く成績が良い友達」「担任であり数学の先生」「その分野が専門の数学者」 

すると、答えは簡単です

最後の「数学者」を選ぶべきだと分かります

なぜなら、人生を最も数学の研究に費やしている専門家だからです

もちろん、専門家もピンキリだし、いつも正しいとは限りませんが、基本的には友達や先生よりは信頼できる場合が多いでしょう

食品の安全性

同じようにして、例えば、ある食品が健康かどうかについて、次の3つが目に留まったとします

「『その食品は危ない』と主張する友達」

「同じく『その食品は危ない』と主張するSNSやYouTubeで見かけた医者」

そして「『その食品の安全性は確認されている』と主張する公的機関」 

この場合、いくら「その食品は危ない」というものを自分自身が信じそうになっていても、最も信頼のおける公的機関を無視して、友達やたまたまSNSなどで見た医者と名乗る人、しかもやぶ医者かもその分野に詳しいかも分からない医者と名乗る人を信用するのは危ないでしょう

複雑なのは、「その食品は危ない」と言う人は、たいてい悪意ではなく、本人も本当にそう信じてしまっていることが多いことです

さらに、危険を伝える声は、それだけで正義に聞こえてしまいます

すると、いくら公的機関が詳しい研究を基に正しい情報を伝えようとしても、「公的機関は悪者だ」という誤った一言で簡単にかき消されてしまう可能性があります

そうなれば、どれほど頑張っても正しい情報を発信することが難しくなります。

②分かりやすい話で敵も作りやすい考え

陰謀論の危険性は、「分かりやすく」しかも「敵を作りやすい」という点にもあります

先ほどの食品の例を考えても分かります。実際に食品が安全かどうかを説明するには

「含まれている成分には何があり、それぞれ人体にはどのような影響があるのか」

「実際に口にした人たちの健康状態には変化があったのか」

など、難しいチェックが必要で、そのためには専門の知識も必要だし、データや研究も必要です

しかし、陰謀論はそうした観点ではなく、わかりやすく、かつ敵を作る話を広げやすいです

陰謀論を広める人は「食品の成分や健康への影響にかんする信憑性の高いデータ」を公開するのではありません

むしろ、「あの食品を食べると危険だ」と誤っているけれど分かりやすい話をして、「安全だと言っている人や組織は悪者だ」と敵を作るのです

危険を煽ったり、誰かを悪者扱いしたりするのは、すごく人をひきつけやすいですが、問題が解決しないばかりか、悪くない人たちを悪者だと思い込ませることで、風評被害や差別などの別の問題すら生み出す危険性もあるのです

③世界は単純であるという考え

そして、最後に、世界が単純であるという誤解を広げるのも陰謀論の特徴です

世界は複雑なので、現実的にはひとりや少数の悪者が簡単に支配することなどできませんが、陰謀論はそうした話を広げてしまいます

例えば、今でも地球が平面だと信じる人はいます

その人たちの中には「自分で見たものしか信じない」と言う人もいますが、それは明らかに嘘です

なぜなら、誰も平面の地球を見たことがないからです

つまり、自分で見たものではなく、自分が信じたいものを信じるということなのです

そして、その人たちの主張は、「政府が地球は平面だということを隠している」というものです

しかし、観測や天文学による証拠に加え、いくつもの国や企業が探査機などを飛ばして地球の姿をとらえているのが現実です

それらを調べることもなく「政府は嘘をついている」という一言で世界がわかった気分になってしまうのです

「政府が世界中の科学者たちを騙し、大勢の宇宙プロジェクトに携わる人たちも全員意のままに操って嘘を言わせる」といったことなどできるはずがありません

世界はそれほど単純ではないのです

しかし問題は、世界は実際には複雑だけれど、話は単純化すればするほど、人々には理解しやすく惹きつけやすいという点です

そのため、なおさら、世界を単純にした話には気を付けなければなりません

映画のように、誰か一人や数人が国民全員に危害を与えたりとか、世界を操ったりすることは現実にはできません

たとえば、政治についても、「悪い政府が悪いことをする」という話は広まりやすいですが、実際には国の政治には大勢のしかも異なる思想を持った人たちがかかわるし実施のプロセスも複雑です

ところが、政府という悪い1かたまりの集団がいてすぐに悪いことをする、といった世界観を持ってしまえば、現実は見えなくなるのです

思想の違い?

中には、陰謀論を信じるかどうかは思想の違いではないかと言う人もいるでしょう

そして、思想は自由な方がいいし、それは、たとえばマイノリティに寛容になれというのと同じではないかと

しかし、実際には断じて違う点が2つあるのです

1.現実を受け入れるかどうか

1つは、マイノリティへの寛容さは、実在する人たちを受け入れることであり、現実を受け入れることです

一方、陰謀論はフェイクニュースを信じることで、現実を拒絶することです

3.対立を生むかどうか

また、2つ目には、マイノリティを受け入れることは不要な対立をなくすことであり、陰謀論は不要な対立を生むことなのです

こうした観点で考えると、陰謀論のリスクが分かります

特に新型コロナワクチンは大きな教訓でしょう

新型コロナウイルスのパンデミックは、現実には、生化学から政治経済までをまたぐとても複雑な出来事です

しかし、陰謀論はこれを単純だとします

疫病の歴史や、ワクチンの仕組みの複雑な説明を見ないまま、「ワクチンは危険だ」の一言で片づけてしまうのです

さらには、「裏の人間が毒を使って人口を減らそうとしている」という発言も耳にします

しかし、世界はそんなに単純ではないのです

仮に誰かがそんなことを思いついても、それが簡単に実行できて全国や全世界に広げられるものではないのです

なぜなら、考えや立場も違う大勢の知らない人たちを完璧にだまして操り、膨大な人員と資金を動かして研究から供給までをしなければならないのからです

しかも、仮にそこまでしても、全国、全世界に広がったワクチンの成分は誰にでも調べることができるので、一人でも化学者が毒を検出すればすぐにばれてしまいます

つまり、現実世界では、映画のように一人や数人の悪者が世界を支配して人口削減なんてできないのです

おわりに

確かに、陰謀論はとても魅力的です

新型コロナウイルスについて知るために、疫学も政治の知識も要りません

すべては単に陰謀だからです。そして、皆が政府に騙されているのに私を含めごく一部だけが真実を知っている、と簡単にマウントを取れます

けれど、残念ながら、実際には事実を知るのはすごく大変で、知識も時間も必要です

そこで、現実は非常に複雑であることを学ぶことこそ、教養であり、勉強を通じて学んでおくべきことだと私は思うのです

少なくとも、Xの有名人や人気のユーチューバーではなく、公的機関や信頼のおける専門家からの情報を優先するくらいの分別は持っておきたいものです

ユーチューバーは、面白く、分かりやすく、時に不安を上手に煽ることに長けているかもしれません

そして、疫学の専門家が説明する科学的な説明は分かりにくく面白くないかもしれません

誰だって、「医学的な専門用語や統計データを用いた難しい説明」よりも、「ワクチンは政府がばら撒く毒だ!」という一言のほうが分かりやすく、そのため広がりやすいのです

「分かりやすいけど、誰でも考えられそうな話」や「情報源が怪しいもの」には注意をしましょう

【本の紹介】

【自己紹介等】

加藤将馬

【経歴】中途半端な高校から、猛勉強して英語を話せるようになり、大阪大学に入学
【卒業後】ある会社の上司が原因で深刻なうつ病を患う
※YouTube自己紹介動画: https://x.gd/DD6HJ
【現在】
①「一度きりの人生を誰もが幸せに生きられる社会を目指す」を信念に発信中:書籍『自殺大国ニッポン』https://amzn.asia/d/0Hv0AuY
②「世界と人間社会についての学識」をテーマに発信中:『宇宙と人類、138億年ものがたり』https://amzn.asia/d/beq5X9W

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