【日本の課題】豊かさと幸せが比例しない理由とは?【ウェルビーイング/幸福学/社会】

幸福学(ウェルビーイング)

「幸せ」…それは、昔から人々が追い求めてきたものであり

哲学や宗教のイメージが強いかもしれません

しかし、実は、ここ数十年で、幸せを学問として研究する動きが広まりました

今回は、「幸福度の高い社会」というテーマで研究を紹介します

※こちらは、YouTube動画としても公開しています!⇩

社会と幸福度

まずは「社会と幸福度」というテーマについて説明をします

というのも、過去約1000年で世界はなんと500倍以上もの経済成長をしましたが[1] 

500倍幸せにはなっていないように見えるのです。

私たちはずっとサバンナで細々と狩りをしていたが、今では遺伝子組み換え技術を駆使したり、宇宙船を飛ばしたりしている

はるかに発展し、便利になり、豊かにもなったが、その分幸せになったかはわかりません

強調したいのですが、決して、私たちが幸せでないわけではありません

技術や経済が発達した分だけ幸福度が向上したとはいえないということです

そこで、社会と幸福度についての重要な研究を3つ紹介します

重要な研究①:経済が飛躍的に成長しても、幸福度が上がらなかった国がいくつもある[2] 

経済が成長すれば、幸福度は上がりそうに思えます

実際、たしかに、世界的には、近年、経済成長しつつ幸福度もやや上がっている傾向にあります

しかし、驚くべきことに、短期間で急激な経済成長を遂げても幸福度がほとんど向上しなかった国々があります

たとえば、アメリカ、そして、日本です

日本は、1960年から50年ほどで6倍以上に経済成長したのにもかかわらず

幸福度には驚くほど変化がありませんでした

重要な研究②:世界では、経済成長するにつれて、幸福度は微増している

さきほど言った通り、幸福度は、たとえば、経済力が2倍になれば2倍に増えるというわけではありません

これはよく認識しておくべきでしょう

とはいえ、これは、「経済成長しても幸福度は上がらない」とか、まして「経済成長すると不幸になる」という意味ではありません

むしろ、様々な幸福度調査により今では分かっていることは、経済力が増えると、若干幸福度が増える傾向にあることです

アメリカなどは、どちらかといえば例外的な国です。

こちらは、世界の経済力と幸福度を表すグラフです

矢印がどれも左下から右上に向かっていることがはっきりわかります

つまり、世界中が、豊かかつ幸せになってきていることを意味するのです

これは、希望が持てる研究結果です

とくに、貧しい国ほど、経済力が上がると幸福度も上がりやすい特徴があります

そのため、より幸せな社会になるにはどうすればいいのか?

少なくとも、1つの答えは、より豊かになることです

そして、世界は、豊かな方向に向かっているのです

重要な研究③:幸福度の高さには理由がある

では、豊かになっても幸福度が上がらなかった日本はどうすればいいのか?

経済力を上げても幸せになれないし、それどころか、日本経済は衰退してきている

幸福度が上がらなかった原因もよくわからない。もうあきらめるしかないのか?

その疑問へのヒントこそ、幸福学の研究に求めることができます

幸福度が高い傾向にある国について調べればいいのです

そうした国と日本を比較すれば、解決策が見つかるかもしれません

ただし、日本がより幸せになる方法は、経済力を上げることよりも達成が難しいかもしれない

なぜなら、そうした目に見えやすいものではなく、「思想」を変える必要があるためです[3]

では、どのような思想が幸福度に影響を及ぼすのでしょうか?

①自由度と寛容さ

幸福度と国についての研究を参照するに、1つ目は、「自由度と寛容さ」

自由度は、特に主観的な自由度です

日本はシステム上、自由だけれど、実際に自由だと感じている度合いが弱いです

そして、寛容さは、調査にもよりますが、少数派をどれほど受け入れるかという指標として重要なのはLGBTの権利です

LGBTが受け入れられている国では幸福度が高く、そうでない国では低い傾向にあります

これはLGBTへの理解だけが要因というよりは、そもそもの違いに寛容な空気自体が幸福度を高めるのでしょう

②平等さ

似たように、関連すると考えられるものとしては、「平等さ」です

具体的な指標としては、男女平等指数が挙げられます

これらは幸福度と関連がみられますが、日本ではあまり良い状況ではありません

さらに、日本は、年齢差で人を区別し、言語と態度を大きく変える文化があり、これも自由度や幸福度に影響しているかもしれません

日本では、上下関係に加え、男女やジェンダー、あるいは働き方や生き方にまで、固定観念が強いのでしょう

逆に言えば、寿命から経済力まで、あらゆる数値化しやすい指標が世界でトップクラスでも幸福度が伴っていないように見える日本が、幸福度をより上げるには、思想を変える必要があるといえます


 [1]World Bank (2023); Bolt and van Zanden – Maddison Project Database 2023; Maddison Database 2010 – with major processing by Our World in Data. Retrieved from https://ourworldindata.org/grapher/global-gdp-over-the-long-run

 [2]Nations | World Database of Happiness

 [3]Ronald, Inglehart et al. (2008) Development, Freedom, and Rising Happiness A Global Perspective (1981-2007). Perspectives on Psychological Science.

加藤将馬

【経歴】中途半端な高校から、猛勉強して英語を話せるようになり、大阪大学に入学
【卒業後】ある会社の上司が原因で深刻なうつ病を患う
※YouTube自己紹介動画: https://x.gd/DD6HJ
【現在】
①「一度きりの人生を誰もが幸せに生きられる社会を目指す」を信念に発信中:書籍『自殺大国ニッポン』https://amzn.asia/d/0Hv0AuY
②「世界と人間社会についての学識」をテーマに発信中:『宇宙と人類、138億年ものがたり』https://amzn.asia/d/beq5X9W

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